こんにちは、しーどらです。
佐野洋子さんと言えば絵本「100万回生きたねこ」の作者です。
実際に読んだ方も多いと思うし、読んでなくても絵本の名前だけは知ってる、という方が少なくないのではないでしょうか。
息子達が幼稚園時代に読み聞かせをした記憶があるのですが、当時私の心にそこまで残る絵本ではありませんでした。
最近になって佐野さんが残された文章を読む機会が何度かありました。
佐野さんですが、エッセイや小説ではかなり癖の強い文章を書かれる方です。
あまりにも飾らず、正直すぎる方なので、読んでいるこちらがヒヤヒヤするくらいですが、嘘がこれっぽっちもないので彼女の世界にどんどん引き込まれていきます。
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「シズコさん」という私小説があります。
シズコさんとは、佐野さんのお母さん。
小さい頃繋ごうとした手を「ちっ」と言いながら振り払われて以来、佐野さんの母親に対する気持ちは嫌悪感。
母親のエピソードがその晩年と佐野さんが小学生、若い頃と時代とを行ったり来たりしながら語られます。
佐野さんの口からは
嫌悪感
キライ
と悪口雑言が飛び出していますが、
彼女がそう言えばいう程、
「お母さんに愛してもらいたかった」という裏返しの言葉が聞こえてくるのです。
実際、お母さんはエネルギッシュで仕事も家事も頑張り夫亡き後は一人で子供達を育てあげるわけですが、自分に手のかかる姉弟がいる事をひた隠しにし、一切面倒も見ない。
プラスの方向には限りなく頑張りますが、マイナスの面は見ようとしない。
一方で妹である叔母はその姉弟を引き取り一緒に生活をする。限りない優しさを持つ反面、上昇志向はあまり感じられない。
佐野さんは優しい叔母ではなく、(悪口を言いながらも)料理も上手く、派手で上昇志向のある母に育てられた事をよしとしています。
お母さんはお母さんで、成績優秀で何でもこなす佐野さんのことをライバル視してしまい高校の担任の先生に
「娘に嫉妬しているのでしょうね」
とこぼしています。
出来る母と出来る娘、お互いに譲らないのですが、お母さんが認知症になることで、長年のわだかまりが溶けていく…。
心の中の葛藤を炙り出すような佐野さんの文章でした。
佐野さんが亡くなられた時に、川上弘美さんはこんなことを書いています。
「こわい人だ。優しくない。でも佐野洋子を読んでいると優しさなんて、ちゃんちゃらおかしいぜ、という気持ちになってくる。わたしは「優しいのが美徳」とか思いこんでいるつまらない人間なので、いつも佐野洋子を読むと自分のことが恥ずかしくなる。めちゃめちゃ恥ずかしくなる。」
この言葉が全てですねぇ…。
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脱力してしまうような私小説やエッセイを読んで、改めて百万回生きたねこを読んでみようと思い、購入しました。
裏の見開きには111刷と書いてありました。
こんなにも多くの人に読まれているのですね。
「百万回生きたねこ」への私なりの感想ですが、
佐野さんは、親や他人から与えられた物には執着しなかったけれど、自分自身で手に入れた仕事、我が子、生活には手離すことが出来ない深い思いと愛情があった。
そんな気持ちでこの絵本を描かれたのかなぁと思いました。
佐野さんが一読者など、気にする筈もありませんが、一瞥して
「したり顔で、わかったようなこと書くな」と鼻で笑われそうです。
決して大人向けに描いた訳ではないそうで
大人が(あなたの)絵本を読むことについてどう思いますか?との質問に
「知るかって感じ」と答えています。
他人に決して媚びない
どこまでも男前な佐野さんでした。
クリエイターとしての佐野さんはトンガッていて格好良すぎ、近寄り難いのですが、一人息子へはみっともないくらい甘いお母さんだったと知って、親近感がわいて来るのを感じました。
今日もおつきあい頂き、ありがとうございます(*^^*)